てんかんのある人の入浴は、浴室内で発作が起きたときに溺れる危険があるため、原則として一人にしないことが大切です。見守るだけでなく、発作が起きてもすぐに対応できる位置にいて、浴槽の水量や扉、連絡手段を整えておきます。発作の種類や頻度によって適した方法は変わるため、主治医から指示を受けている場合は、その内容を優先してください。
入浴前に整えること
安全な見守りは、入浴前の準備から始まります。次の項目を確認してから入浴します。
- 体調不良、寝不足、発熱、強い疲労がないか確認する
- 発作の起こりやすい時間帯を避ける
- 脱衣所と浴室を暖め、急な温度差を小さくする
- 浴室の床に滑り止めマットを敷く
- 浴槽のふた、洗面器、シャンプーなどを取りやすい位置に置く
- 浴室の扉を内側から施錠しないようにする
- 見守る人がすぐ助けを呼べるよう、携帯電話や呼び出しボタンを近くに置く
- 入浴時間を決め、長湯を避ける
一人で入浴中に発作が起きたことがある人、発作の回数が多い人、意識を失う発作がある人は、浴槽につかる入浴を避け、介助者がいる時間にシャワーを使う方法を主治医に相談してください。
入浴中の見守り方法
見守る人は、浴室の音や呼びかけにすぐ気づける場所にいて、必要なら浴室内で介助します。「入浴しているから大丈夫」と任せきりにせず、決めた間隔で声をかけ、返事や様子を確認します。
浴槽につかる場合
- 浴槽の湯量を少なめにし、肩まで深くつからないようにする
- 浴槽内で首や頭を支えられる姿勢をとる
- 浴槽のふたを近くに置き、必要なときにすぐ使えるようにする
- 入浴時間を短くし、眠気やぼんやりした様子があれば浴槽から出る
- 介助者は浴室の近くを離れず、呼びかけへの返事を確認する
浴槽の中で発作が起きる可能性がある場合は、浴槽に入らずシャワーだけにするほうが対応しやすいことがあります。シャワーチェアを使う場合も、座位を保てるか、発作時に頭や顔が水に入らないかを確認してください。
声かけと確認の仕方
「大丈夫?」だけでなく、「今から洗髪します」「返事をしてください」など、短く具体的に声をかけます。返事がない、普段と違う動きをしている、顔色が悪い、頭や顔が湯の中に入っているといった場合は、すぐに浴室へ入って確認します。
発作の前兆が本人に分かる場合は、前兆があったら浴槽から出る、座る、知らせるなどの行動をあらかじめ決めておきます。発作の記録には、起きた時刻、入浴中の状況、意識や体の動き、発作の長さを残すと、主治医への相談に役立ちます。
浴室で発作が起きたときの対応
発作中は、まず溺れないことを最優先にします。発作を止めようとして体を押さえつけたり、口に物を入れたりしてはいけません。
- 浴槽の栓を抜き、給湯を止める。
- 可能なら頭と顔を水面より上に保ち、口や鼻が水につからないようにする。
- 発作中に無理に立たせたり、浴槽から引きずり出したりしない。頭や体をぶつけないよう、周囲の物を離す。
- 発作が治まったら、呼吸と意識を確認する。
- 呼吸が苦しそう、反応が戻らない、体が水につかっていた時間がある場合は、周囲に助けを求めて119番通報する。
浴槽から出す必要がある場合でも、介助者が一人で無理に持ち上げると、本人と介助者の両方がけがをすることがあります。助けを呼び、可能な範囲で安全を確保してください。
救急車を呼ぶ目安
次のような場合は、発作が治まったように見えても救急要請を検討します。特に水中に顔が入っていた、呼吸が正常でない、意識が戻らない場合は、ためらわず119番へ連絡してください。
- 呼吸がない、または普段どおりに呼吸していない
- 発作が長く続いている、または5分以上続いている
- 発作が繰り返し起き、意識が戻らない
- 水を飲み込んだ可能性がある、むせ続けている、呼吸が苦しそう
- 頭を強く打った、やけどをした、出血している
- 発作後も意識が戻らず、普段の状態に戻らない
- いつもの発作と様子が違う
呼吸が正常でなく反応もない場合は、119番通報をし、電話の指示に従って救命処置を行います。発作中に口へ指やタオル、水などを入れないでください。舌をかまないようにする目的でも、口の中に物を入れるのは危険です。
家庭で決めておきたい見守りルール
家族や介助者が毎回同じ対応をできるように、次の内容を紙にまとめ、脱衣所など見つけやすい場所に置きます。
- 発作の前兆と、普段の発作の様子
- 発作が起きたときに行うこと、避けること
- 救急車を呼ぶ基準
- 主治医や家族の連絡先
- 服薬の内容と、発作時に使う薬が処方されている場合の使い方
- 浴槽から出すときの役割分担
発作時に使う薬は、自己判断で追加したり、入浴中に使ったりせず、主治医から指示された方法だけで使用します。入浴の可否やシャワーへの変更、見守りに必要な人数は、発作の型、意識を失うかどうか、発作の頻度、年齢や身体の状態によって異なります。
てんかんのある人の入浴で最初にすること
まず、主治医に「浴槽につかってよいか」「シャワーにしたほうがよいか」「発作時に救急車を呼ぶ基準」を確認してください。そのうえで、浴室の施錠をやめ、浴槽の湯量を少なくし、介助者がすぐ対応できる時間に短時間で入浴します。
入浴中は一人にしない、発作時は水面から顔を出す、呼吸と意識に異常があれば119番通報することが基本です。







