てんかんのある高齢者が暮らす住宅では、転倒・転落、入浴中の事故、火災、発作後の混乱によるけがを防ぐ対策が重要です。発作の種類や起こる時間帯、歩行状態、認知機能によって必要な対策は異なるため、住宅全体を一律に変えるのではなく、本人の発作と生活動作に合わせて整えます。
まず確認したい、住宅の危険箇所
最初に、発作が起きた場所と、発作中に体をぶつけそうな場所を確認します。次の場所は、特に優先して点検してください。
- 段差、階段、滑りやすい床
- 浴室、浴槽、洗面所
- コンロ、ストーブ、アイロンなどの熱源
- 家具の角、ガラス製品、硬いテーブル
- ベッド周辺や、転落した場合に頭を打つ場所
- コード類や小物など、足を取られたり口に入れたりする物
発作が起きた日時、場所、姿勢、意識の状態、体の動き、発作の長さ、発作後の様子を記録すると、主治医や介護職が対策を検討しやすくなります。動画を撮影する場合は、本人の安全を優先し、撮影のために近づいたり移動させたりしないでください。
転倒・転落を防ぐための安全対策
歩行中や立ち上がり時に発作が起きる人は、床と動線の対策を優先します。
- 床に置いたマット、電気コード、新聞、荷物を片付ける
- 滑りやすい敷物は外すか、ずれにくいものに替える
- 廊下やトイレまでの通路に十分な明るさを確保する
- 家具の角に保護材を付け、家具は倒れないよう固定する
- 階段には手すりを設置し、必要に応じて生活の中心を一階に移す
- ベッドから降りる場所に硬い物や家具を置かない
手すりや歩行器は、本人の体格や歩き方に合わないと、かえって転倒につながることがあります。福祉用具専門相談員、理学療法士、作業療法士などに、実際の動線を見てもらうと選びやすくなります。
浴室とトイレは一人での事故を減らす
入浴中に意識を失う発作がある場合、浴槽での溺水を防ぐ対策が最優先です。一人での入浴を避け、見守りができる時間帯に入浴することを主治医や家族、介護者と検討します。
- 浴室と脱衣所に手すりを設置する
- 床に滑りにくい対策をする
- 浴槽の湯を深くしすぎない
- 浴室のドアを外から開けられる状態にする
- 長時間出てこないときに気づける見守り方法を決める
- 可能なら、浴槽につからずシャワーで済ませる方法も検討する
「入浴中は必ず安全」と判断できる条件は人によって異なります。発作の意識障害がある人や、発作後に混乱しやすい人は、入浴方法そのものを主治医に相談してください。
火災ややけどを防ぐキッチン対策
発作中に熱源へ近づく可能性がある場合は、コンロや暖房器具の使い方を見直します。
- 調理中は一人にならないよう、時間帯や役割を決める
- 火を使わない調理器具への変更を検討する
- 自動消火機能のある機器を選ぶ
- ストーブやヒーターの周囲に物を置かない
- 包丁、はさみ、ガラス製品は取り出しやすい場所に放置しない
- 煙感知器や住宅用火災警報器が作動するか確認する
電気式の機器でも、機種によってはやけどや火災の危険があります。「電気なら無条件に安全」とは考えず、発作時に操作を続ける可能性があるかを含めて判断します。
寝室では発作時のけがを減らす
睡眠中に発作が起こる人は、ベッド周辺の転落や衝突を防ぎます。ベッドの高さを低くし、周囲から硬い家具や尖った物を離してください。
ベッド柵は、体が挟まる危険や、乗り越えようとして転落する危険があるため、自己判断で取り付けないことが大切です。必要性がある場合は、介護職や福祉用具の専門職に設置方法を確認します。
見守り機器を使う場合も、発作をすべて検知できるとは限りません。機器の検知条件、通知先、夜間に誰が対応するかを事前に決めておきます。
家族や介護者が行う発作中の対応
発作中は、無理に押さえつけたり、口に物を入れたりしません。発作を止めようとして体を強く動かすと、けがにつながることがあります。
- 周囲の家具、熱い物、硬い物を離し、頭の下に柔らかい物を置く。
- 衣服の首元をゆるめ、可能なら発作の開始時刻を確認する。
- けいれんが収まった後は、呼吸を妨げないよう体を横向きにする。
- 意識が戻るまで、飲み物や薬、食べ物を無理に与えない。
- 発作が長引く、繰り返す、呼吸が戻らないなどの場合は救急要請する。
発作が5分以上続く、短い間隔で繰り返して意識が戻らない、呼吸が戻らない、発作中に大きなけがをした、水中で起きた、初めての発作である場合は、119番通報を検討してください。本人に処方された発作時の薬がある場合は、使用方法をあらかじめ医師や薬剤師から確認し、指示どおりに使います。
住宅の変更だけでなく、医療・介護の情報をそろえる
住宅対策と同時に、主治医、薬剤師、家族、ケアマネジャーなどで次の内容を共有します。
- 発作の種類と、起こりやすい時間帯
- 発作が続いた場合の連絡先と救急要請の基準
- 服薬の時間、飲み忘れへの対応、副作用の可能性
- 入浴、調理、外出、階段利用を一人で行えるか
- 発作後に混乱したときの見守り方法
高齢者では、てんかん以外の病気や薬の影響、視力・筋力の低下が転倒リスクに関係することもあります。発作が増えた、転倒が続く、服薬後に強い眠気やふらつきがある場合は、薬を自己判断で中止せず、主治医へ相談してください。
最初に行うことは、発作が起きる場所と、そこで起こり得るけがを記録し、浴室・階段・熱源・ベッド周辺から順に危険を減らすことです。発作の特徴や本人の身体状態に合う対策を、医療・介護の担当者と一緒に決めると、過剰な制限を避けながら安全性を高められます。







