てんかん発作による転倒を防ぐには、家具を低く安定したものに替え、発作時にぶつかる硬い物や角を減らし、通路を広く保つことが基本です。ただし、家具だけで発作中の転倒を完全に防ぐことはできません。発作の起こり方や転倒する方向に合わせて、主治医や作業療法士などにも相談しながら住環境を整えます。
てんかん発作による転倒を防ぐ家具の選び方
家具は「倒れにくい」「角が少ない」「割れたり外れたりしにくい」ものを優先します。見た目だけでなく、発作中に身体がぶつかった場合の危険も考えて選びます。
| 家具・用品 | 選ぶときのポイント | 避けたい特徴 |
|---|---|---|
| 収納家具・本棚 | 背が低く、重心が低いもの。壁や床に固定できるもの | 細くて背が高いもの、キャスター付きで固定できないもの |
| テーブル・机 | 丸みのある角、太く安定した脚、滑りにくい底面 | ガラス製、尖った角、簡単に動くもの |
| 椅子 | 幅と奥行きがあり、座ったときにぐらつかないもの。必要に応じて肘掛け付き | 折りたたみ式、脚が細いもの、キャスター付きでロックできないもの |
| ベッド | 高さが低く、周囲に硬い家具を置かずに済むもの | 二段ベッド、ロフトベッド、高さのあるベッド |
| テレビ台・家電台 | 重く安定し、機器や配線を固定できるもの | 軽くて動きやすい台、床を横切る長い電源コード |
角やガラスのある家具を減らす
発作で身体が倒れたとき、テーブルや棚の角は頭や顔を打つ原因になります。新しく購入するなら、角が丸い家具や、柔らかい素材で覆われた家具を選びます。
すでにある家具には、家具用のコーナーガードを取り付ける方法があります。ただし、はがれた部品を誤って口に入れたり、外れたガードにつまずいたりすることがあるため、取り付け後も定期的に確認してください。
ガラス天板やガラス扉の家具は、割れたときに切り傷につながるため、発作時に倒れ込む可能性がある場所では避けるほうが無難です。
背の高い家具は固定する
本棚、食器棚、タンスなどは、発作で身体がぶつかった際に倒れないよう、壁や床に固定します。家具を固定しても、収納物が落下することがあるため、重い物や割れ物は低い位置に置きます。
家具の固定方法は、壁の材質や家具の重さによって異なります。賃貸住宅や壁に穴を開けられない住宅では、家具の転倒防止器具の使用条件を確認し、不安があれば施工業者などに相談してください。
発作時にぶつからない家具の配置
配置のポイントは、家具の数を減らし、倒れる場所と通路から硬い物を遠ざけることです。家具を壁際に寄せるだけでなく、発作が起こりやすい場所から危険物を外します。
部屋の中央や通路を広く保つ
床に置く収納箱、スツール、観葉植物、扇風機などは、発作時の転倒や移動の妨げになります。普段使わない家具は置かず、ベッドから出入りする通路やトイレまでの動線に物を置かないようにします。
- 家具同士の間に、身体が通れる幅を確保する
- 床に置く小型家具や荷物を減らす
- 電源コードを通路に横切らせない
- キャスター付き家具はロックし、必要なら使用場所を見直す
- 家具の扉や引き出しが通路にはみ出さないようにする
家具を減らすだけでなく、床に置いた物がない状態を続けられることが重要です。収納場所を決め、使った物を床に戻さない仕組みにします。
よく倒れる場所から硬い家具を離す
発作が立っているときに起こりやすい人は、立ち上がる場所、廊下、洗面所、キッチンなどに硬い家具を置かないようにします。座っているときや寝ているときに起こりやすい人は、椅子やベッドの周囲にぶつかる家具がないか確認します。
どこで発作が起きたかを記録すると、配置を見直す場所が分かりやすくなります。発作の記録では、発生場所、立っていたか座っていたか、倒れた方向、ぶつかった物、けがの有無を残します。
ベッド周りは低く、周囲を空ける
寝ている間の発作や、起床時の転倒がある場合は、低いベッドを検討します。ベッドの横に硬いサイドテーブルや尖った家具を置かず、起き上がったときに足元へ物がない状態にします。
二段ベッドやロフトベッドからの転落が考えられる場合は、使用を続ける前に主治医や家族と安全性を検討してください。ベッド柵も、すべての人に安全とは限りません。身体が挟まる、乗り越えようとして落ちるなどの危険があるため、取り付ける場合は製品の対象者と注意事項を確認します。
床や家具周りで追加できる転倒対策
床の対策は、転倒したときの衝撃をやわらげる可能性があります。ただし、マットがずれると別の転倒原因になるため、固定できる製品を選び、段差やめくれがないか確認します。
- 滑り止め加工のあるマットを使い、端が浮かないようにする
- 厚すぎるマットや段差ができる敷物は避ける
- マットの下に滑り止めを使い、ずれたらすぐ直す
- 水回りは濡れたままにせず、吸水性と滑りにくさを確認する
- 床に置く家具の脚やコードがマットを押し上げていないか確認する
衝撃をやわらげる床材やマットを使う場合も、転倒を必ず防げるわけではありません。歩行が不安定な人や車いすを使う人では、マットの厚さが移動の妨げになることもあるため、本人の動きに合わせて選びます。
家具だけでは防ぎにくい場所も確認する
家具を整えても、階段、浴室、キッチン、窓の近くでは転倒ややけどなどの危険が残ります。発作の起きる時間帯や姿勢に合わせて、家具以外の環境も見直します。
- 階段の近くに家具や荷物を置かない
- 浴室では、発作時に頭を打つ硬い物や角のある物を減らす
- キッチンでは、熱い鍋や刃物を身体が倒れる範囲に置かない
- 窓際では、窓に寄りかかれる家具を置かない
- 玄関や廊下では、靴や小物を床に置かない
特に、入浴中の発作や階段からの転落がある場合は、家具の変更だけで対応しないでください。発作の種類や起こる場面を主治医に伝え、入浴方法や生活上の制限も含めて相談します。
発作が起きたときの家具の使い方と注意点
発作中は、無理に身体を押さえつけたり、口に物を入れたりしません。周囲の家具や硬い物を離し、頭の下に柔らかい物を置ける場合は置きます。
- 発作が始まった時刻を確認する
- テーブル、椅子、家電など、身体に当たりそうな物を可能な範囲で遠ざける
- 衣服の首元をゆるめ、身体を押さえつけずに見守る
- けいれんが収まったら、呼吸を妨げないように横向きにする
- 発作の長さ、動き、けが、発作後の様子を記録する
発作が5分以上続く、短時間に繰り返して意識が戻らない、呼吸が戻らない、重いけがをしている、水中で起きた、初めての発作であるといった場合は、地域の救急番号へ連絡してください。時間の基準や本人の救急対応計画がある場合は、それに従います。
家庭に合う家具配置を決める確認手順
家具を一度に買い替えるより、実際の発作の状況を記録して危険の大きい場所から変えると、優先順位をつけやすくなります。
- 過去の発作で倒れた場所と方向、ぶつかった家具を記録する
- 発作が起きやすい部屋の床にある物をいったん減らす
- 尖った角、ガラス、背の高い家具、動く家具を確認する
- 家具を固定し、通路とベッド周囲を空ける
- マットやコーナーガードを取り付けた後、ずれや段差がないか確認する
- 変更後の発作や転倒、家具への衝突が減ったかを記録する
家具の選び方だけで発作そのものを止めることはできません。発作の起きる場所、倒れ方、家具の硬さや高さを確認し、危険な家具を減らして通路を空けることが、住環境を整える基本です。けがが続く場合や配置の判断が難しい場合は、発作の記録と部屋の写真を用意して、主治医や作業療法士に相談してください。







