てんかんのある人におすすめのシャワーチェアは、背もたれと肘掛けがあり、脚の高さを調整できる「安定性重視」のタイプです。ただし、シャワーチェアだけで発作中の転倒や溺水を防げるわけではありません。発作の種類・起こる頻度・一人で移乗できるかによって、必要な機能や見守りの方法は変わります。
てんかんのある人に向くシャワーチェアの条件
選ぶときは、座りやすさよりも「発作が起きても転倒しにくいこと」と「介助しやすいこと」を優先します。
| 確認する項目 | おすすめの条件 | 理由 |
|---|---|---|
| 背もたれ | 背中を支えられるもの | 姿勢を保ちやすく、座位が不安定な人を介助しやすい |
| 肘掛け | 左右にあり、必要に応じて跳ね上げできるもの | 座位を保ちやすく、立ち座りや移乗の支えになる |
| 脚の高さ | 調整でき、4本の脚を同じ高さに固定できるもの | 浴室の床の傾斜に合わせて、がたつきを減らせる |
| 脚先 | 滑りにくく、床にしっかり接地するゴム脚 | 水で濡れた床でのずれを抑える |
| 座面 | 体格に合い、排水穴があるもの | 座位を保ちやすく、座面に水がたまりにくい |
| 材質・形状 | 角が少なく、割れにくく、手入れしやすいもの | 発作時や移乗時のけがのリスクを抑えやすい |
最初に検討しやすいのは背もたれ・肘掛け付きタイプ
座った姿勢を保てる人でも、発作によって急に体が崩れることがあります。そのため、簡易な丸いスツール型より、背もたれと肘掛けが付いたシャワーチェアのほうが、姿勢の保持と介助に向いています。
ただし、肘掛けがあると横からの移乗を妨げることがあります。車いすやベッドから移る場合は、肘掛けを跳ね上げられるか、座面の高さが移乗先と合うかを確認してください。
発作のタイプによって選び方を変える
急に意識を失ったり、体が倒れたりすることがある場合
背もたれと肘掛けに加えて、座面が広すぎず、体が横に滑りにくいものを選びます。キャスター付きのタイプは、移動や介助に便利な場合がある一方、ロックを忘れると動く危険があります。
キャスター付きにする場合は、座る・立つ・洗う間に確実に車輪を固定できるかを確認し、本人だけでロック操作を任せてよいかを医療・介護の専門職と検討してください。必要性がなければ、固定脚のタイプのほうが扱いやすいことがあります。
体が硬くなったり、けいれんしたりすることがある場合
背もたれが高く、肘掛けがあり、介助者が横や後ろから支えやすい形が適しています。体をベルトで固定するタイプは、発作中の動きを妨げたり、外すのに時間がかかったりするため、自己判断で使用しないでください。
発作のときに頭をぶつけやすい人は、シャワーチェアだけでなく、浴室内の硬い物や鋭い角を減らすことも重要です。浴室用マットを追加する場合は、マット自体がめくれたり、椅子の脚を不安定にしたりしないか確認します。
眠気やふらつきがあり、立ち座りが不安定な場合
高さを細かく調整でき、肘掛けを手がかりにしやすいタイプを検討します。座面が高すぎると足が床から浮き、低すぎると立ち上がるときに大きな力が必要になります。
目安として、座ったときに足の裏が床へつき、膝が極端に高くなったり伸び切ったりしない高さに調整します。実際の高さは、本人の身長、脚の長さ、浴室の床の状態によって変わります。
「リクライニング型」や「入浴用車いす」は必要?
首や体幹を自分で支えにくい場合は、リクライニング機能付きのシャワーキャリーなどが候補になります。ただし、大型で重く、浴室の広さや段差、介助者の操作能力も必要です。
また、入浴用車いすは、通常のシャワーチェアより適している場合がある一方、すべての人に必要とは限りません。次のような場合は、購入前にケアマネジャー、理学療法士、作業療法士、福祉用具専門相談員などへ相談してください。
- 一人で座位を保てない
- 車いすから浴室内へ移ることが難しい
- 発作後に意識が戻るまで時間がかかる
- 体が大きく動く発作があり、介助者だけでは支えにくい
- 自宅の浴室に段差や狭い出入口がある
シャワーチェア以外に確認したい安全対策
てんかんのある人が浴室を使うときは、椅子の性能だけでなく、発作が起きた場合に水を止め、助けを呼びやすい環境を整えます。
- 一人で入浴させず、発作の状況に応じて近くで見守る
- 浴室のドアを施錠しない
- 緊急時に外から開けられるようにする
- 手元で操作できるハンドシャワーを使う
- 給湯温度を高くしすぎない
- 浴室内に物を置きすぎず、頭をぶつける物を減らす
- 床や椅子の脚が濡れた状態で、がたつきや滑りを確認する
- 必要に応じて、呼び出しボタンや防水の連絡手段を用意する
シャワー中の発作に備える方法は、発作の症状や本人の動ける範囲によって異なります。主治医や訪問看護師、リハビリテーション職に、実際の浴室とシャワーチェアを見てもらうと、より具体的に判断できます。
購入前に行うチェック
商品名だけで選ばず、本人が使う浴室で安全に使えるかを確認します。
- 浴室の出入口、洗い場、浴槽までの幅を測る。
- 本人の身長・体重・座位の安定性に対応しているか、商品の仕様を確認する。
- 座ったときに足が床につく高さへ調整できるか確認する。
- 肘掛けが移乗の邪魔にならないか、跳ね上げや取り外しができるか確認する。
- 脚の先端が4か所とも床につき、力をかけてもがたつかないか確認する。
- 介助者が後ろ・横から手を入れられるか確認する。
- 購入後は、乾いた状態だけでなく、床と椅子が濡れた状態でも安定するか確認する。
製品ごとに、耐荷重や座面の幅、肘掛けの可動範囲、キャスターのロック方法は異なります。これらは商品ページや取扱説明書で確認し、記載がない条件を「使える」と判断しないでください。
発作が起きたときのために決めておくこと
シャワーチェアに座っていても発作を完全に防ぐことはできません。発作が起きた場合に誰が水を止めるか、どのように周囲の物を避けるか、いつ救急要請するかを、家族や介助者で事前に共有します。
けいれん中に無理に押さえつけたり、口に物を入れたり、水を飲ませたりしてはいけません。発作が長引く、短時間に繰り返す、呼吸が戻らない、けがをした、初めての発作であるなどの場合は、地域の救急要請や医療機関への相談が必要です。本人の主治医から個別の対応指示を受けている場合は、その指示を優先してください。
結論:まずは安定した固定脚タイプを基準に選ぶ
迷った場合は、背もたれ・肘掛け・高さ調整・滑りにくい固定脚・排水穴を備えたシャワーチェアを基準にします。キャスター、リクライニング、体を固定するベルトなどは、必要性と危険性を確認してから選んでください。
最初に行うことは、本人の発作の特徴と移乗方法を主治医や福祉用具専門相談員に伝え、実際の浴室で使えるサイズと介助方法を確認することです。







