てんかんの入浴中の転倒防止に使える椅子は?

てんかんの入浴中の転倒防止に使える椅子は?

てんかんのある人の入浴中の転倒防止には、背もたれと肘掛けがあり、脚に滑り止めが付いた入浴用シャワーチェアが候補になります。ただし、椅子だけで発作中の転倒や溺水を防げるわけではありません。浴槽につかる場合は、見守りや入浴方法の見直しも必要です。

てんかんの入浴に向く椅子の条件

選ぶときは、座りやすさだけでなく、発作やふらつきが起きたときに体が滑り落ちにくい構造かを確認します。

  • 背もたれがある:後ろへ倒れたり、姿勢を崩したりするのを抑えやすい。
  • 肘掛けがある:座る・立つときに体を支えやすい。
  • 脚が広く、滑り止めが付いている:床の上で椅子が動きにくい。
  • 高さを調節できる:足の裏を床にしっかり着けられる高さに合わせやすい。
  • 座面が滑りにくく、水が抜ける:せっけんや湯で座面が滑るリスクを抑えやすい。
  • 体格に合う幅と耐荷重である:狭すぎたり、使用可能な体重を超えたりしないものを選ぶ。

一般的な低い風呂いすや、背もたれ・肘掛けのない簡易スツールは、姿勢を保ちにくい場合があります。特に、発作の前後にふらつきがある人は、安定性を優先して選んでください。

おすすめは「シャワーチェア」と「入浴用いす」のどちらか

浴槽に入らず、洗い場でシャワーを使うなら、背もたれ・肘掛け付きのシャワーチェアが使いやすい選択肢です。浴槽への出入りに不安がある場合は、まず浴槽につからず、座ってシャワーを浴びる方法を検討します。

種類 向いている場面 注意点
背もたれ・肘掛け付きシャワーチェア 洗い場で座って体を洗う 床面との相性や、椅子の滑りにくさを確認する
背もたれ付き入浴用いす 洗い場での立ち座りを減らす 浴槽内で使うものとは限らないため、用途を確認する
バスボード・浴槽用手すり 浴槽をまたぐ動作を補助する 発作中の安全を確保する器具ではない
入浴用リフト 浴槽への出入りや立ち上がりを補助する 設置条件や介助者の操作が必要になることがある

バスボードや入浴用リフトは、浴槽への移乗を助ける道具です。発作が浴槽内で起きる可能性がある場合、これらを使えば一人で安全に入浴できるとは判断できません。

椅子を置くだけでは不十分な理由

てんかん発作では、意識が一時的に低下したり、体が硬くなったり、手足が動いたりすることがあります。そのため、椅子に座っていても、体がずれる、頭を打つ、浴槽や床に倒れるといった危険をなくすことはできません。

また、浴槽内で意識を失うと、転倒だけでなく溺水につながるおそれがあります。したがって、入浴用の椅子は転倒しにくい姿勢を作るための補助具と考え、発作の頻度や起きる時間帯に応じて入浴方法全体を見直す必要があります。

入浴時に組み合わせたい安全対策

椅子を使う場合も、次の対策を組み合わせてください。どの方法が適切かは、発作の種類、発作が起きる頻度、入浴中の見守りが可能かによって変わります。

  • できるだけ発作が起きにくい時間帯に入浴する。
  • 一人で入浴せず、家族や介助者が近くにいる状態にする。
  • 浴室のドアを施錠しない。
  • 入浴することを家族や介助者に伝える。
  • 浴室の床に水やせっけんが残らないようにする。
  • 立ち上がるときは急に動かず、手すりなどにつかまる。
  • 浴槽のふたや浴槽の縁を、体を支える目的で使わない。

発作が起きたときに介助者が対応できない場合や、過去に入浴中の発作・意識消失があった場合は、浴槽につかる方法を続ける前に、主治医や訪問看護師、作業療法士などへ相談してください。

椅子の高さと置き方を確認する方法

  1. 椅子を平らな床に置き、四つの脚がすべて接地していることを確認します。
  2. 座ったときに足の裏が床に着き、膝が大きく浮かない高さに調節します。
  3. 座面に水やせっけんを残さず、座った状態で体が前後に滑らないか確認します。
  4. 肘掛けを使って立ち座りできるか、無理な力が必要ないかを確認します。
  5. 実際の使用中に椅子が動く場合は、床材との相性や脚ゴムの状態を確認し、使用を中止して別の製品や方法を検討します。

椅子の脚に市販の滑り止めを追加する場合は、製品の安定性やメーカーの使用条件を確認してください。合わない部品を取り付けると、かえってぐらつくことがあります。

入浴中に発作が起きた場合の対応

発作が起きたら、まず本人を無理に押さえつけたり、口に物を入れたりしないでください。浴槽内であれば、可能な範囲で顔が水につからないように頭を支え、周囲の危険を取り除きます。本人を動かせる状況なら、浴槽から出して安全な場所で様子を見ますが、介助者が一人で無理に持ち上げないことも重要です。

発作が長く続く、発作が繰り返して意識が戻らない、呼吸が苦しそう、けがをしている、水を飲み込んだ可能性があるなどの場合は、地域の救急相談窓口や救急車の要請を検討してください。主治医から発作時の対応を指示されている場合は、その指示を優先します。

選ぶ前に主治医や介助者へ伝えること

椅子を購入する前に、次の点を整理して相談すると、必要なタイプを判断しやすくなります。

  • 発作の種類と、入浴中・入浴後に発作が起きたことがあるか
  • 意識を失うことや、発作後にふらつくことがあるか
  • 一人で座る・立つ・浴槽をまたぐ動作ができるか
  • 見守りや介助ができる時間帯と人数
  • 浴室の広さ、床の材質、浴槽の高さ

介護保険の対象になる福祉用具や、自治体・介護事業者を通じて選定できる場合もあります。利用できる制度や対象商品は、要介護認定の有無、地域、商品の区分によって異なるため、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に確認してください。

結論として、候補は背もたれ・肘掛け・滑り止め付きで、体格に合うシャワーチェアです。ただし、入浴中の発作や意識消失がある場合は椅子だけで安全とはいえないため、浴槽を避ける、見守りを付けるなどの方法を主治医や介助者と決めてから使用してください。