てんかん発作に備える浴室マットは、滑りにくく、つまずきにくく、水がたまりにくいものを選びます。ただし、浴室マットだけで発作中の転倒や溺水を防ぐことはできません。マット選びに加えて、浴槽よりシャワーを優先する、1人で入浴しない、発作時の対応を家族と決めておくことが重要です。
てんかん発作の対策に浴室マットは必要?
浴室マットは、入浴後や洗い場での滑りを減らすための補助用品です。発作が起きたときの意識消失や体の硬直、転倒、浴槽での溺水そのものを防ぐものではありません。
特に、発作の前兆がない人、意識を失う発作がある人、入浴中に発作を起こしたことがある人は、マットの性能だけで安全と判断しないでください。入浴方法や見守り体制を、主治医や家族と一緒に見直す必要があります。
浴室マットの選び方
選ぶときは、滑りにくさだけでなく、発作後に介助しやすいか、マット自体が新たな転倒原因にならないかも確認します。
洗い場には、ずれにくく水がたまりにくいものを選ぶ
- 裏面に滑り止め加工があり、床に置いたときに簡単に動かない
- 表面に水がたまりにくく、排水を妨げない
- 端が反り返りにくく、足を引っかけにくい
- 洗い場全体を無理に覆わず、排水口や出入口をふさがない
- 汚れやカビを洗い流しやすく、乾燥させやすい
吸盤が付いていても、床の材質や水分、汚れによっては十分に固定できない場合があります。購入後は、設置した状態で端が浮かないか、足で押してずれないかを確認してください。
浴槽内マットは、つまずきや立ち上がりへの影響を確認する
浴槽の底に敷くマットは、浴槽内での滑りを減らす目的で使われます。ただし、厚みや位置によっては足元が不安定になったり、立ち上がりにくくなったりすることがあります。
発作時に浴槽内で姿勢を保てない可能性がある場合、浴槽内マットを追加するだけでは不十分です。浴槽につかる入浴を控え、シャワーに切り替えることが安全につながる場合があります。
脱衣所のマットは、薄くてずれにくいものにする
脱衣所では、濡れた足で移動するため、マットの端につまずかないことが大切です。厚みのあるマットや、床との間に段差ができるものは避け、裏面がずれにくいものを選びます。
マットの下に水がたまると滑りやすくなるため、濡れたまま放置せず、使用後は乾燥させてください。マットがずれる、端がめくれる、表面が傷んでいる場合は交換します。
マット以外に行いたい浴室の対策
てんかん発作への浴室対策では、発作が起きたときに「浴槽に沈まない」「助けを呼べる」「周囲がすぐ対応できる」環境を作ることが中心です。
- 浴槽につかるより、座って使えるシャワーを優先する
- 1人で入浴せず、家族が在宅している時間に入る
- 浴室のドアを施錠しない
- 入浴することを家族に伝え、長時間出てこないときの確認方法を決める
- 浴室内にガラス製品や硬く尖った物を置かない
- 洗面器やシャンプーなど、足元に散らばる物を片付ける
- シャワーチェアを使う場合は、安定して座れるか、立ち座りを介助できるかを確認する
- 発作の記録や主治医の指示に基づき、入浴する時間帯や方法を調整する
シャワーにすれば必ず安全になるわけではありません。座った姿勢でも発作が起きる可能性があるため、発作の種類や頻度によっては見守りが必要です。
入浴中に発作が起きたときの対応
入浴中に発作が起きたら、無理に押さえつけたり、口に物を入れたりしないでください。まず水や熱源から離し、けがと溺水を防ぐことを優先します。
- 浴槽にいる場合は、可能であれば水を抜き、頭や顔が水につからない状態にする。
- 周囲の硬い物や熱い物を遠ざけ、頭の下に柔らかい物を置く。
- 体を押さえつけず、発作が収まるまで時間を測る。
- 発作後に呼吸があり、動かせる状態なら、気道を確保しやすい横向きの姿勢にする。
- 呼吸が戻らない、反応がない、けがをしている場合は、周囲に助けを求めて119番通報する。
発作中に水を飲ませたり、薬やタオルを口に入れたりしてはいけません。発作が終わった後も意識がはっきりしない場合は、無理に立たせず、呼吸状態を確認しながら見守ります。
救急車を呼ぶ目安
次のような場合は、発作の様子を見ながら119番への通報を検討してください。
- 発作が5分以上続く
- 発作が繰り返され、意識が戻らない
- 呼吸が苦しそう、または呼吸が戻らない
- 浴槽や水の中に沈んでいた、溺れた可能性がある
- 頭を強く打った、やけどをしたなど大きなけががある
- 初めて起きた発作で、てんかんと診断されていない
通報時は、発作が始まった時刻、続いた時間、意識や呼吸の状態、水に沈んだ可能性、けがの有無を伝えます。本人に救急時の対応計画や処方された発作止めの薬がある場合は、医師から受けた指示に従ってください。
家庭に合う対策の決め方
最初に、主治医へ「入浴中に発作が起きる可能性がある場合、浴槽とシャワーのどちらがよいか」「見守りはどの程度必要か」を確認してください。発作の種類、意識を失うか、発作の頻度、これまでの入浴中の発作の有無によって適切な対策が変わります。
そのうえで、家庭では次の順に決めると整理しやすくなります。
- 浴槽につからずシャワーにするか、入浴方法を決める。
- 1人で入浴しない場合の見守り役と、確認する間隔を決める。
- マットを置く場所を洗い場と脱衣所に分け、排水や出入口をふさがないようにする。
- 発作時に誰が119番通報し、誰が水を抜くかを決める。
- 実際にマットを置き、濡れた状態でずれや段差がないか確認する。
マットを敷いた後に歩きにくくなったり、車いすや介助者の動線をふさいだりする場合は、敷く範囲を見直してください。安全のために追加した物が、つまずきや介助の妨げになっては逆効果です。
てんかん発作に備える浴室マットの結論
浴室マットは、滑りにくく、ずれにくく、端がめくれず、水がたまりにくいものを選ぶのが基本です。ただし、マットだけでは発作中の溺水を防げないため、浴槽よりシャワーを優先し、1人での入浴を避け、発作時の対応を家族と決めておきましょう。
まずは主治医に入浴方法と見守りの必要性を確認し、その指示に合わせてマットと浴室の環境を整えることが、本人の発作の状態に合った対策になります。







