てんかん発作が起きたとき、はさみを持ち続けさせたり、手を押さえつけたりしてはいけません。発作が始まったら、はさみを無理に取り上げず、本人や周囲の人がけがをしないよう、刃物から距離を取れる環境を作ります。発作中の対応だけでなく、発作が起きても危険が少ない使い方に変えておくことも大切です。
はさみを使っている最中に発作が起きたら
最優先は、はさみによる切り傷や転倒を防ぎながら、発作の経過を見守ることです。次の順番で対応します。
- 周囲の人に「発作かもしれない」と伝え、時間を測ります。発作が始まった時刻を記録すると、救急要請の判断に役立ちます。
- はさみや工具、熱い物など、近くの危険物を遠ざけます。本人の手から無理に引き離そうとせず、手を押さえつけたり、体を拘束したりしないでください。本人が握ったままの場合は、周囲の人が離れて安全を確保します。
- 転倒しそうなら、頭の下に柔らかい物を置きます。眼鏡を外し、家具の角など硬い物を周囲から移動させます。けいれんを止めようとして体を押さえないでください。
- 首元をゆるめ、口に物を入れずに見守ります。舌をかまないようにと、指やスプーン、布などを口に入れるのは危険です。水や薬も、意識が戻るまで飲ませません。
- けいれんが止まったら、呼吸を確認し、眠っている場合は体を横向きにします。呼吸が苦しそう、反応が戻らない、切り傷などのけががある場合は、救急車を呼んでください。
発作中に無理に移動させると、はさみの刃が本人や介助者に当たるおそれがあります。火、階段、車道など、そこにいること自体が危険な場合を除き、発作が落ち着くまでその場の危険物を取り除く対応を基本にします。
発作に備えて、はさみを使う前にできる安全対策
はさみを使う場所と姿勢を変えるだけでも、発作時のけがを減らせます。特に、発作がいつ起きるか分からない場合は、次の対策を組み合わせてください。
- 立ったまま使わず、安定した椅子に座って作業する
- 机の上を片付け、はさみ以外の刃物や硬い物を置かない
- 机の端や、家具の角の近くを避ける
- 刃先を人のいる方向や自分の体へ向けない
- 使わないときは、刃を閉じて決めた場所に置く
- 床や階段、浴室など、転倒時に危険な場所では使わない
- 発作が起きやすい時間帯や、疲労・睡眠不足があるときは作業を控える
- 発作が起きた場合に助けを求められる人が近くにいる状態で使う
はさみを選べる場合は、先端が丸いタイプや、手を離すと刃が開くタイプなど、用途に合った安全性の高い製品を検討できます。ただし、形状だけで発作時のけがを防げるわけではありません。切る物や握りやすさも含めて、本人の主治医や作業療法士などに相談すると判断しやすくなります。
はさみの使用を一人で避けたほうがよいケース
次のような場合は、少なくとも発作が安定するまでは、一人ではさみを使うことを避ける判断が必要です。
- 最近、意識を失う発作や突然倒れる発作が増えている
- 発作の前触れがなく、発作の始まりを予測できない
- 発作後に混乱し、危険な物を持ったまま動くことがある
- 手に物を持った状態で発作を起こしたことがある
- はさみを使う場所の近くに階段、火、ガラス製品などがある
- 発作後に切り傷や頭を打つけががあった
「一人で使えるか」は、てんかんという病名だけで一律に決まるものではありません。発作の種類、意識を失うか、発作の頻度、発作が起きる時間帯、薬の変更後かどうかによって危険性が変わります。現在の作業が可能か迷う場合は、主治医に「はさみを使う作業を一人でしてよいか」「どのような発作なら中止すべきか」を具体的に確認してください。
発作後にはさみで切った場合の対応
出血があるときは、清潔な布やガーゼで傷口を押さえます。出血が止まらない、傷が深い、傷口が開いている、顔や目の周囲を切った、指先の感覚や動きに異常がある場合は、医療機関に相談してください。
頭をぶつけた可能性がある場合は、発作後に本人の意識が戻っても注意が必要です。繰り返し吐く、強い頭痛がある、反応が悪い、片側の手足が動かしにくいなどの症状があれば、救急要請を検討します。
救急車を呼ぶ目安
次の場合は、発作を止めようとせず119番に連絡してください。
- 発作が5分以上続いている
- 発作が繰り返され、意識が戻らない
- 初めて起きた発作である
- 呼吸が戻らない、呼吸が苦しそう、顔色が悪い
- はさみで深く切った、頭を強く打ったなど、大きなけががある
- 水中で発作が起きた、または発作後に呼吸の異常がある
救急隊には、発作が始まった時刻、けいれんが続いた時間、意識が戻ったか、はさみでのけがや転倒があったか、服用中の薬などを伝えます。
安全対策の要点
はさみを使うときは、座って作業し、周囲から危険物を取り除き、発作時に助けを呼べる環境を作ります。発作が始まったら、はさみを無理に取り上げたり体を押さえたりせず、刃物を遠ざけ、頭を守り、口に物を入れずに時間を測ってください。
発作の頻度や意識の状態によって、はさみを一人で使えるかどうかは変わります。発作後のけがが心配な場合や判断に迷う場合は、次の作業を行う前に主治医へ具体的な使用条件を確認しましょう。







