てんかんがある人の夏場は、暑さによる脱水、睡眠不足、疲労、服薬の乱れを避けることが、発作への備えにつながります。熱中症そのものが必ず発作を起こすとは限りませんが、体調の悪化や意識障害が発作と似て見えることもあります。発作が起きたときの対応と、熱中症が疑われるときの対応を分けて準備しておくことが大切です。
夏場にまず行いたい熱中症対策
基本は、暑さを避け、こまめに水分をとり、睡眠と服薬のリズムを保つことです。次の対策を、外出時だけでなく自宅でも行いましょう。
- 気温や湿度が高い時間帯の外出・運動を減らし、日陰や冷房のある場所で休む
- のどが渇く前から、少量ずつ水分をとる
- 大量に汗をかいた場合は、水分だけでなく塩分などの補給についても検討する
- 通気性のよい服、帽子、日傘などを使い、首や脇を冷やす
- 睡眠不足、食事抜き、過度な飲酒を避ける
- 入浴前後や起床後、外出前後に体調を確認する
水分の種類や量に制限がある人、腎臓や心臓の病気がある人は、自己判断で水分や塩分を増やさず、主治医の指示を優先してください。
発作を防ぐために夏場に注意したいこと
発作のきっかけは人によって異なりますが、夏は暑さに伴う睡眠不足、疲労、脱水、食事や服薬時間の乱れが重なりやすくなります。発作の原因を一つに決めつけず、普段と違う体調変化を記録すると、主治医に相談しやすくなります。
服薬を忘れない
抗てんかん薬は、自己判断で減らしたり中止したりしないでください。外出や旅行のときは、必要な薬を忘れないようにし、服薬時間がずれそうな場合の対応をあらかじめ主治医や薬剤師に確認しておきます。
薬は高温や直射日光を避け、薬の説明書や薬剤師の指示に従って保管します。車内や炎天下に長時間置いた薬、見た目や状態が変わった薬を使用してよいか分からない場合は、薬剤師に確認してください。
睡眠と冷房を優先する
暑さで眠れない状態が続くと、疲労がたまり、発作の起こりやすさに影響する可能性があります。室温を無理に我慢せず、エアコンや扇風機を使い、就寝中も暑さで目が覚めない環境を整えます。
一人での外出や入浴を見直す
発作の頻度や重さによっては、暑い時間帯の一人での外出、長時間の運動、海やプール、熱い風呂やサウナが危険になることがあります。どの活動を避けるべきかは発作の種類や状況によって異なるため、主治医に具体的に確認してください。
発作が起きたときの対応
発作が起きたら、まず周囲の危険を取り除き、発作が始まった時刻を確認します。無理に押さえつけたり、口の中に物を入れたりしないことが重要です。
- 倒れた場所が危険なら、安全な場所へ移す。移動が難しい場合は、頭の下に柔らかい物を置く。
- 眼鏡を外し、首元やベルトなど締め付ける物をゆるめる。
- けいれんが落ち着いたら、呼吸を妨げないように体を横向きにする。
- 発作の開始時刻、けいれんの長さ、意識や呼吸の状態を確認する。
- 発作中や意識が戻っていない間は、水、薬、食べ物を無理に飲ませない。
本人のために処方された発作時の薬があり、使用方法を医師から指示されている場合は、その計画に従います。家族や周囲の人は、発作時の薬の名前、使う条件、使用方法、救急車を呼ぶ基準を事前に共有しておくと対応しやすくなります。
救急車を呼ぶべき発作の目安
次のような場合は、救急車を呼ぶことを検討せず、119番へ通報してください。迷う場合も、発作の様子と経過を伝えて救急の指示を受けます。
- けいれんが5分以上続く
- 発作が繰り返され、意識が戻らない
- 発作後も呼吸が苦しそう、唇が青い、意識が戻らない
- 水中、道路、階段、高所などで発作が起きた
- 頭を強く打った、出血や大きなけががある
- これまでにない発作、初めての発作である
- 妊娠中、重い持病がある、または発作後の状態が普段と違う
発作が数分で治まり、いつもの経過と同じに見えても、夏場は脱水や熱中症が重なっている可能性があります。意識が戻った後も、体を涼しい場所で休ませ、体調が戻らない場合は医療機関へ相談します。
熱中症が疑われるときの対応
大量の発汗、めまい、頭痛、吐き気、強いだるさ、筋肉のけいれんなどは、熱中症でみられる症状です。自力で水分を飲めない、意識がもうろうとしている、反応が鈍い、体が熱いといった場合は、重い熱中症の可能性があるため救急車を呼びます。
- 涼しい場所へ移し、衣服をゆるめる。
- 首、脇の下、足の付け根などを冷やす。
- 意識がはっきりしていて自力で飲める場合だけ、少量ずつ水分をとらせる。
- 意識が悪い、吐いている、けいれん中などの場合は、誤嚥のおそれがあるため無理に飲ませない。
- 症状が改善しない、または意識や呼吸に異常がある場合は119番へ通報する。
熱中症による意識障害やけいれんと、てんかん発作は見た目だけでは区別できないことがあります。暑い場所にいた後に発作や意識障害が起きた場合は、「いつもの発作」と決めつけず、暑熱環境にいた時間、体温、発汗、水分摂取、発作の長さを救急隊に伝えてください。
家族や周囲の人が準備しておくもの
本人だけでなく、家族や学校、職場の人にも対応方法を伝えておくと、発作と熱中症が重なったときに判断しやすくなります。
- 発作が起きたときの姿勢や、してはいけない対応
- 発作時に使う薬の有無と使用条件
- 救急車を呼ぶ基準
- 主治医や家族の連絡先
- 普段の発作の長さや、発作後の様子
- 暑さを避ける場所、水分、冷却用品
スマートフォンなどに発作の開始時刻と終了時刻を記録すると、医療者が状況を判断する手がかりになります。撮影する場合は安全確保を優先し、本人のプライバシーにも配慮してください。
主治医に相談しておきたいこと
夏の外出、旅行、運動、海水浴、プール、入浴などに不安がある場合は、具体的な場面を挙げて主治医に相談します。特に、最近発作が増えた、薬を飲み忘れた、暑さで眠れない、発作時の薬の使い方が分からない場合は、次の受診を待たずに相談が必要なことがあります。
判断の基本は、暑さ・脱水・睡眠不足・服薬の乱れを避けること、発作時に口へ物を入れないこと、意識や呼吸に異常があれば救急車を呼ぶことです。本人の発作の特徴に合った対応は個人差があるため、夏を迎える前に主治医と家族で具体的な計画を決めておきましょう。







