てんかん発作に備えて外出時に持ち歩くポーチには、発作時の対応方法が分かる情報、緊急連絡先、処方された薬、本人の身元を確認できるものを入れます。発作の種類や処方内容によって必要なものは異なるため、主治医から指示されている内容を優先してください。
外出用の収納ポーチに入れるもの
1.発作時の対応メモ
発作が起きたときに周囲の人が対応できるよう、短いメモを入れておきます。スマートフォンだけに保存すると、本人が操作できない場合や充電切れに対応できないため、紙のメモも役立ちます。
- 発作が起きたときにすること
- してはいけないこと
- 発作が続いた場合の連絡先
- 救急車を呼ぶ目安
- 本人に必要な介助
たとえば「発作が始まった時刻を確認する」「周囲の硬い物や危険な物を離す」「頭の下に柔らかい物を置く」「発作中に体を押さえつけない」「口の中に物や指を入れない」と書いておくと、初めて対応する人にも伝わりやすくなります。
2.緊急連絡先と医療情報
次の情報を、カードなどにまとめて入れておきます。個人情報を記載するため、紛失した場合に備えて必要最小限にしてください。
- 本人の氏名
- 家族や支援者の電話番号
- 通院先の医療機関名と電話番号
- てんかんの診断を受けていること
- 服用中の薬の名前と用量
- 薬や食べ物などのアレルギー
- 発作時に使う薬の有無
本人が説明できない状況を想定し、カードの表面に「てんかんがあります」「発作時は時間を測ってください」など、最初に伝えたい情報を大きく書く方法もあります。
3.処方された発作の薬
外出中に服用する予定の薬がある場合は、医師や薬剤師の指示どおりに持ち歩きます。薬は元の薬袋や説明書と一緒に入れ、薬の名前や服用方法が分かる状態にしてください。
飲み忘れに備えて自己判断で薬の量を増やしたり、別の容器に移したりするのは避けます。持ち歩く予備の量や保管方法は、処方元または薬剤師に確認してください。
4.医師から処方された発作止めの薬
発作が長引いた場合などに使う発作止めの薬が処方されている人は、指示された薬をポーチに入れます。ただし、処方されていない人が市販薬や他人の薬を入れる必要はありません。
発作止めの薬は、誰が、どの状態で、どの方法で使うのかを家族や付き添いの人と確認しておくことが大切です。使い方が分からない場合は、外出前に主治医や薬剤師へ確認してください。発作中に飲み物や薬を無理に口へ入れると、誤嚥(ごえん)につながるおそれがあります。
5.お薬手帳や薬の情報が分かるもの
スマートフォンのお薬手帳を利用している場合でも、紙のお薬手帳の写真や薬の一覧を入れておくと、端末の電池が切れたときに確認しやすくなります。薬の変更があったときは、ポーチの情報も更新します。
6.身元を確認できるもの
発作後に本人がすぐ話せない場合に備え、健康保険証の情報や身分証明書など、必要なものを持ち歩きます。マイナンバーカードなどを持ち歩くかどうかは、紛失時のリスクも考えて本人や家族で決めてください。
身分証明書を入れない場合でも、氏名と緊急連絡先を書いたカードや、医療情報を示すカードを用意しておくと、周囲が連絡先を確認しやすくなります。
発作の種類によって追加するもの
すべての人に同じものが必要なわけではありません。発作の起こり方や外出先に合わせて、次のようなものを追加します。
| 状況 | 追加を検討するもの | 注意点 |
|---|---|---|
| 発作後に衣服が汚れることがある | 替えの下着、薄手の衣類、ウェットティッシュ、ビニール袋 | ポーチが大きくなりすぎないよう、必要量に絞る |
| 発作後に口の中が乾きやすい | 発作が終わって意識が戻った後に使う飲み物 | 発作中や意識がはっきりしないときは飲ませない |
| 光や音などが発作のきっかけになりやすい | サングラス、耳栓など | 発作を確実に防ぐものではない。本人が使いやすい物を選ぶ |
| 一人で外出する機会がある | 医療情報カード、連絡先カード、スマートフォンの緊急情報 | 連絡先や薬の情報を定期的に更新する |
飲み物や食べ物は、発作が終わって意識が十分に戻った後に本人が安全に飲食できる場合に限ります。発作中や発作直後に無理に飲食させないでください。
ポーチの選び方と薬の保管方法
ポーチは、必要なものをすぐ取り出せる大きさで、本人または付き添いの人が開けやすいものを選びます。外から「医療情報」「緊急連絡先」などが分かる表示を付ける方法もありますが、個人情報が見えすぎないよう注意が必要です。
- ファスナーや面ファスナーを片手で開けやすい
- 薬と情報カードを分けて入れられる
- 雨や汗で濡れにくい
- バッグの中で見つけやすい色や形である
- 定期薬と発作止めの薬を区別できる
薬は高温、多湿、直射日光を避け、薬の説明書に書かれた保管方法に従います。車内や日の当たる窓際など、温度が上がりやすい場所に長時間置かないでください。冷蔵が必要な薬や、光を避ける必要がある薬は、自己判断で通常のポーチに入れず、薬剤師へ保管方法を確認します。
発作が起きたときにポーチで対応できること
ポーチは発作を止める道具ではなく、周囲の人が落ち着いて対応するための情報と必要物品をまとめるものです。けいれんする発作が起きた場合は、次の順番で対応します。
- 発作が始まった時刻を確認する。
- 刃物、熱い物、家具の角など、周囲の危険な物を離す。
- 転倒していれば、頭の下に衣類やバッグなどの柔らかい物を置く。
- 首元をゆるめ、発作が収まるまでそばで見守る。
- 発作が収まったら、呼吸を確認し、眠っている場合は可能であれば体を横向きにする。
体を押さえつけたり、口の中に指、箸、タオルなどを入れたりしないでください。発作中に水、薬、食べ物を口へ入れるのも避けます。
救急車を呼ぶ目安
発作が5分以上続く、いったん止まっても繰り返す、呼吸が戻らない、重いけがをした、水中で発作が起きた場合は、救急要請が必要になることがあります。初めて起きた発作、妊娠中の発作、発作後も意識が戻らない場合なども、緊急性を判断するため救急車を呼ぶことを検討してください。
本人に発作時の対応計画がある場合は、その内容を優先します。救急要請の基準は発作の種類や持病によって変わるため、あらかじめ主治医に「何分続いたら救急車を呼ぶか」「発作止めの薬を使う条件は何か」を確認しておくと安心です。
外出前にポーチを確認する方法
ポーチは一度作って終わりではありません。薬の変更や連絡先の変更がないか、定期的に点検します。
- 定期薬と発作止めの薬が入っているか確認する。
- 薬の期限、残りの数、保管状態を確認する。
- 対応メモの内容が、現在の主治医の指示と合っているか確認する。
- 家族や付き添いの人が、発作時の対応と薬の使い方を説明できるか確認する。
- 替えの衣類や連絡先カードなど、必要な物が不足していないか確認する。
迷うものをすべて詰め込むより、「発作時の情報」「連絡先」「必要な薬」「本人に必要な物」に絞ると、持ち運びやすく、周囲も使いやすいポーチになります。最初に、主治医へ発作時の対応計画と持ち歩く薬の量を確認し、その内容をポーチのメモに反映してください。







