てんかん発作中に介護用ベルトで体を押さえるのは、原則として避けてください。発作の動きを止めようとすると、ベルトの食い込みや圧迫、関節・筋肉のけが、呼吸の妨げにつながるおそれがあります。まずは周囲の危険物を遠ざけ、発作の時間を測りながら安全を確保します。
発作中に介護用ベルトを使ってはいけない理由
てんかん発作では、本人の意思で体の動きを止められないことがあります。その状態でベルトを締めたり、体を強く押さえたりすると、発作による動きとベルトの固定が重なり、胸や腹部が圧迫される可能性があります。
また、発作の種類によっては呼吸が不安定になったり、吐いたものが気道に入ったりすることがあります。体を仰向けのまま固定すると、呼吸や嘔吐物の排出を妨げるおそれがあるため、「動かないように固定する」よりも「けがをしないように周囲を整える」ことが重要です。
発作が起きたときの対応手順
- 発作の開始時刻を確認します。時計やスマートフォンで時間を測り、発作が何分続いているか記録します。
- 周囲の硬い物や熱い物を離します。家具の角、食器、暖房器具などを本人から遠ざけ、頭の下に柔らかい物を敷きます。
- 衣服や装具の圧迫を確認します。首元などがきつい場合は緩めます。ただし、発作中に介護用ベルトを外そうとして体を押さえつけたり、無理に引っ張ったりしないでください。
- 体の動きを無理に止めません。手足を押さえたり、ベルトを締めてベッドや車いすに固定したりしないことが基本です。
- 口に物を入れません。舌をかまないようにと、指やタオル、スプーンなどを口に入れるのは危険です。
- 発作が落ち着いたら、呼吸を確認します。意識が戻らず横になる場合は、可能であれば体を横向きにして気道を確保します。首や背中のけがが疑われるときは、無理に動かさず救急要請を優先します。
介護用ベルトは発作後もすぐに締めない
発作が終わった直後は、本人に意識の混乱や強い眠気が残ることがあります。この状態で急いで起こしたり、ベルトで固定したりすると、転倒や圧迫、本人の不安につながる可能性があります。
呼吸と意識の状態を確認し、本人が落ち着くまでそばで見守ります。移動や車いすへの移乗が必要な場合も、意識が戻り、本人の状態を確認してから行ってください。
発作がないときのベルト使用も医療・介護計画に沿って判断する
介護用ベルトが移乗時の姿勢保持などを目的とする場合でも、製品の使用目的、締め付けの強さ、使用時間、本人の体調によって注意点が異なります。発作の既往がある人では、主治医、看護師、理学療法士、ケアマネジャーなどに、使用してよい場面と中止する条件をあらかじめ確認してください。
- 発作中はベルトで体を押さえない
- 胸や腹部を圧迫する締め方をしない
- 呼吸、顔色、意識、皮膚の食い込みを確認する
- 本人が苦しそうなときや状態が変化したときは使用を中止する
- 発作後、意識が十分に戻る前に移動や再固定をしない
本人が自分で外せないベルトを使う場合や、ベッド・車いすから動けないようにする目的で使う場合は、単に「安全のため」と判断せず、施設や自治体の手順、本人の権利に関わるルールも含めて専門職に確認する必要があります。
救急車を呼ぶ目安
次のような場合は、救急要請を検討してください。地域の救急相談窓口を利用できる場合は、迷った時点で相談しても構いません。
- 発作が5分以上続いている
- 発作が繰り返され、意識が戻らない
- 呼吸が戻らない、呼吸が苦しそう、顔色が悪い
- 今回が初めての発作である
- 頭を強く打った、出血した、骨折が疑われるなど大きなけががある
- 水中で発作が起きた
- 発作後も意識や呼吸の状態が改善しない
救急隊や医療機関には、発作が始まった時刻、続いた時間、体の動き、意識や呼吸の変化、けがの有無、使用した薬があればその内容を伝えます。発作の様子を安全に撮影できる場合は、医師の判断材料になることがありますが、撮影のために本人の安全確保を後回しにしないでください。
介護者が事前に決めておくこと
発作時に慌てないため、主治医や介護職と次の内容を共有しておくと対応しやすくなります。
- 発作が起きたときの本人の症状と、通常の持続時間
- 救急車を呼ぶ基準
- 発作時に使用する薬が処方されている場合の使用方法
- ベルトを使用してよい場面と、使用を中止する条件
- 発作後に休ませる姿勢と、移動を再開する目安
- 主治医、家族、訪問看護、施設などへの連絡先
てんかん発作中は、介護用ベルトで動きを止めるのではなく、危険物を除き、時間・呼吸・意識を確認することが基本です。ベルトの使用方法は本人の発作の特徴や身体状態によって変わるため、発作が起きていないときに、主治医や介護の専門職と具体的な対応手順を決めておきましょう。







